日賀野兼一さんの世界

2002年12月号

群青の星降る天空に忽然と浮び上る中世の街。きっとイタリアあたりの山の上の建物なのでしょう。しかしよく見ると、それらは実際にあるどこかではなく、作者の心の中から生み出された記憶の街のようです。 油絵よりも以前、中世ルネッサンス時代に盛んだったテンペラ画という技法で描かれたこれらの絵は、顔料に生卵や樹脂、蜜蝋、油などを練り合わせて作る為、油絵に比べ色調が明る<、からっと乾いた感じに仕上り、線が滲まない為に細密な描写に向いています。作者の日賀野さんは、学生時代初めて訪れたイタリアでこの技法に出合い、それまで描いていた油絵にない魅力に惹きつけられ、以来すっとこの技法による表現を追求されています。 彼が、この青空に拘る理由は、環境問題や昨年の同時多発テロ事件などから、平和の象徴である青い空を、より一層大切にしなければという強い願いが込められているからだと聞きました。 そんな氏が描くサンタクロースのユーモラスな姿も、幻想的な大人のメルヘンとして、クリスマスカードとして人気があるようです。

  
Artist日賀野兼一(Kenichi Higano)
Websitehttp://higanoart.com/

文責:瀬川智貴
(※注)内容は取材当時のものです。

PAGE TOP

PREV

ホンムラモトゾウの世界

NEXT

大内田敬さんの世界

PAGE TOP