藤井ひろみさんの世界

2001年10月号

雲なのか煙なのか、黒い渦巻の中からニョキッと出た、とぽけた顔のオプジェ。作者の藤井さんは、檜の白木のもつ、つるっとした肌合いや、錆漆を施した古色を帯びたザラッとした質感、さらに日本画の絵具で彩色をするなど、伝統的な技法を多様に組合わせながらも、決して重々しくならず、何処かくすっとさせられるユーモラスな木彫を作られている作家です。大学時代は大きな作品も手がけられていたようですが、あるとき若いアーティスト達が自らの作品を道具に用いたお茶会に参加したことがきっかけで自分の身の丈に合った大きさの、工芸的ともいえるスタイルに変わっていったそうです。従来、多くの彫刻家が捕らわれていた「重さ」や「量感」といった柵から、スルリとすり抜け、ほのぼのと宙に漂うような雰囲気は、見ていて心地良く感じられます。特に、壁から少し飛び出して浮かぷ「雲」や「ヒト」のレリーフのような作品を見ていると、宇治平等院の雲中供養菩薩に通する不思講な浮遊感を連想してしまうのは私だけでしょうか?

  
Artist藤井ひろみ

文責:瀬川智貴
(※注)内容は取材当時のものです。

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