栗本夏樹さんの世界

2003年4月号

黒の地に赤や緑、青などの鮮やかな模様がパッと目に飛び込んでくる重箱や丸い蓋物の漆器。巨きなオブジェなどで漆の新たな可能性に挑戦している栗本さんの、束京での久々の個展には、珍しくこのような器の世界が見られるそうです。

彼の心境に大きな転期をもたらしたのは一昨年、文化庁の在外研修員として一年間イギリスに滞在したときのこと。それまでがむしゃらに制作に明け暮れていた日常から切り放ち、装飾美術の世界的コレクションで知られるヴィクトリア&アルバート美術館に身を置き、ひたすら見ることに徹して得た結論は、理屈は抜きに「良いものは良い」という単純なこと。帰国後は英国の田園生活に倣い、自然豊かな地に移り住み、以前のようにあくせくしなくなったと語っておられました。

低成長期に入った日本に住む今の私たちにとって、先達である英国人の良いものを長く大切に使い続け、自然を慈しむ余裕ある暮らしの中から学ぶべきものは多くあるのかもしれません。栗本さんの新たなる境地の作品にも目が離せません。


  
Artist栗本夏樹(Kurimoto Natsuki)
Websitehttp://www.kcua.ac.jp/professors/natsuki-kurimoto/?fbclid=IwAR0osSBOO0MmWrQJ05-TxK2G15z0Kx1UrvmVWpKfj6X9IHHeaFGQXAhRJd4
facebookhttps://www.facebook.com/profile.php?id=100011655124038

文責:瀬川智貴
(※注)内容は取材当時のものです。

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